東京高等裁判所 昭和58年(ネ)1269号 判決
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【判旨】
一静岡地方裁判所浜松支部が昭和五〇年一一月一三日本件仮処分決定をしたことは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、本件仮処分決定の被保全権利は、同決定自体には表示されていないが、控訴人の本件各土地に対する二分の一又は三分の一の共有持分権に基づく被控訴人らに対する登記抹消請求権ないし抹消にかわる移転登記請求権であることが認められる。
そして、控訴人が被控訴人らに対し本件各土地につき本件請求事件<編注、別件の共有持分権確認等請求事件>を提起し、第一、二、三審においていずれも敗訴し、昭和五七年二月一二日第一審の請求棄却の判決が確定したことは当事者間に争いがなく、<証拠>によれば、右事件における控訴人の被控訴人らに対する請求は、本件各土地に対する二分の一又は三分の一の共有持分権に基づく抹消にかわる移転登記請求であることが認められる。そうすると、右事件においては右登記請求権の不存在が既判力をもつて確定されたものと解すべきである。なお、右事件の判決が控訴人主張のように遺言の方式違背を理由とするものであるとしても、右判断は何ら左右されない。
二控訴人は、本件仮処分決定は亡左口未と控訴人間の昭和三一年六月二一日付死因贈与による控訴人の本件各土地に対する二分の一の共有持分権又は控訴人の亡左口未の妻としての法定相続分三分の一の共有持分権に基づいてなされたものであるところ、本件請求事件においては、二分の一の共有持分権の取得原因として右死因贈与でなく遺贈を主張したのであり、右事件の確定判決の既判力は、右死因贈与に基づく更正登記請求権の存否にまで及ぶものではないから、右事件は本件仮処分事件の本案訴訟とはいえない、と主張する。確かに<証拠>をあわせれば、控訴人の本件請求事件における第一次的請求原因の主張は、亡左口未が控訴人に対し昭和三一年六月二一日付で二分の一の共有持分権を遺贈した、というものであることが認められるが、前記死因贈与の主張も右遺贈の主張も、ともに昭和三一年六月二一日付でなされた亡左口未による同一の死因処分行為に基づき同じ二分の一の共有持分権の取得をいうものであつて、両者の相違は法律的構成のそれにすぎないから、本件各土地に対する共有持分権の取得原因が右死因贈与、遺贈のいずれであるかは、前記一認定の本件仮処分決定の被保全権利たる登記請求権の同一性を左右するものではないと解するのが相当である。そうすると、本件請求事件は本件仮処分事件の本案訴訟に該当するものであり(この判断は、本件請求事件が本件仮処分事件についての起訴命令によつて提起されたものでないとしても、何ら左右されない。)、該訴訟において右被保全権利たる登記請求権の不存在が既判力をもつて確定された以上、右登記請求権の発生原因として前記死因贈与による共有持分権の取得を新たに主張して別途登記請求をなしうるものとして、本件仮処分決定を右登記請求権を保全するために維持することは、許されないものというべきである。よつて、控訴人の前記主張は採用することができない。
また、<証拠>によれば、控訴人は、本件請求事件において、本件各土地に対する共有持分権の取得原因として、前記遺贈の主張のほかに、第二次的に亡左口未の妻として法定相続分三分の一の共有持分権を相続したことを主張し、右共有持分権に基づく被控訴人らに対する抹消にかわる移転登記請求は、信義則に違反するものとして排斥され、確定するに至つていることが認められる。そして、控訴人が右法定相続分三分の一の共有持分権を有するとして、これに基づく登記請求権の主張をなしうるか否かは、亡左口未との協議離婚の無効確認を求める訴訟において控訴人が勝訴し、該判決が確定するかどうかにかかわらないのであり、したがつて、右判決確定後に控訴人のする共有持分権に基づく請求を目して、同確定前に控訴人のした本件請求事件における前記請求とは異なる新たなものとみるべきいわれはなく、また、右判決が控訴人の勝訴に確定したからといつて、そのことが本件各土地に対する共有持分権の新たな取得事由となるものでもない。以上によれば、控訴人が、将来その主張のような遺産分割請求をするについて、本件仮処分決定を維持する必要があり、理由があるものということはできず、この点に関する控訴人の主張も採用の限りでない。
なお、<証拠>によれば、控訴人は、その主張するところによつても、亡左口未の相続人らに対してはともかく、本件各土地の転得者である被控訴人らに対しては、死因贈与契約に基づく債権的請求権たる更正登記請求権を有するものでないことが明らかであるから、右請求権を保全するために本件仮処分決定を維持する必要及び理由があるとする控訴人の主張の失当であることはいうまでもない。
(鈴木潔 鹿山春男 河本誠之)